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PLATFORM

グロースレコメンデーションのためのスケーラブルな推論基盤

by
Sumeet Kumar & Max Zhao
July 31, 2025
15 分

Auxiaは、エージェント ベースのカスタマー ジャーニー オーケストレーション・プラットフォームであり、エンタープライズ顧客に対してパーソナライズされたマーケティング施策を提供します。顧客企業は、アプリ内、メール、その他のデジタル体験において、APIを通じて「Decision(施策)」と呼ばれるレコメンデーションを取得することで、Auxiaと統合します。

エンタープライズ向けにサービスを提供する場合、インフラは必然的に大規模なスケーリングの課題に直面します。現在Auxiaでは、秒間6,000件を超えるリクエストを処理しており、予測レイテンシの99パーセンタイルを100ms以下に抑えることを目指しています。各リクエストでは、およそ1,000通りのユーザー向け施策から最適なものを選定する必要があります。

本記事では、こうした要件を満たすために構築した高性能な推論基盤について詳しくご紹介します。

リアルタイムパーソナライゼーションをスケーリングする

私たちAuxiaでの、アーキテクチャの意思決定では、3つの重要要件があります:

  • 高スループット、低レイテンシ処理:数千の同時リクエストに対して100ms未満で応答
  • リアルタイムの文脈データ統合:新鮮なユーザー文脈や行動データを推論に取り込む
  • マルチテナントモデル対応:顧客と目標の組み合わせごとに異なるモデルでの同時推論を実現

これらの要件の組み合わせにより、ロードバランスされたサービスインスタンス間で動的にモデルを読み込める、高性能なリアルタイム推論システムが求められました。

アーキテクチャ:Kotlin + TensorFlow Serving Sidecar

私たちは、Kubernetesポッド内にKotlinサーバ(制御プレーン)とTensorFlow Servingバイナリ(推論エンジン)を同居させる構成を採用しました。この設計により、懸念事項の明確な分離を保ちつつ、高性能と柔軟性の両立を実現しています:

  • Kotlinサーバー:動的なモデル読み込み、モデルメタデータの管理、入出力テンソル変換、ライフサイクル・オーケストレーション
  • TensorFlow Serving:gRPCベースのAPIにより、学習済み TensorFlow モデルに対する高速な推論処理を提供

モデルロジックはTensorFlow側に隔離され、オーケストレーションやビジネスロジックはKotlinサーバーに集中する設計となっています。

Kotlin + gRPCの技術基盤を持つ私たちにとって、この設計はKotlinの強み(特に非同期プログラミングにおけるコルーチン)を活かしつつ、機械学習インフラの複雑さを抽象化します。Kotlin層では以下を担当しています:

  • インフラ抽象化:さまざまなモデル形式(ONNX、TorchServe、ホステッドサービス)にも対応できる構造
  • 動的モデル管理:Artifact Registryからモデルを読み込み、TensorFlow ServingのModelServiceを管理
  • 形式変換:ユーザーや施策の特徴をモデル入力用のテンソルへ変換し、出力されたテンソルを施策スコアへ戻す

TensorFlow Servingを選んだ理由

TorchServeのような代替案ではなく、TensorFlow Servingを選定した理由は以下のとおりです:

  • gRPC APIの利点:強い型付けとプログラマティックに定義されたインターフェースで、バイナリ シリアライズにより通信サイズと CPU負荷を削減。大量の特徴量を扱うAuxiaにおいて特に重要
  • 高パフォーマンス:即時的な意思決定モデルを可能にする、ネィティブでマルチスレッド処理に最適化された C++ 実装
  • 本番環境向けの機能:動的モデル読み込みの対応や自動バッチ推論への組み込み対応

一方で、以下のような課題もあり、Kotlin 側で補完しています:

  • 動的読み込みの制約:技術的には動的読み込みには対応しているが、当初のバイナリは静的なモデルに最適化されている
  • 実運用での検証不足:コンテナ内でのCPU誤認識など現場ならではの問題が発生
  • 最適化要件:すべてのTensorFlow演算が高速とは限らないため、モデル形式の設計が重要

推論抽象化レイヤー

AuxiaのPrediction (推論) Service は、推論の複雑さを抽象化し、施策を軸に開発されたシンプルなAPIを提供しています。この抽象化により、様々なモデルアーキテクチャーをサポートできています。例えば、バンディット  (Bandit) アルゴリズムやツリーベース のアップリフトモデル、そして深層学習を使った推薦モデルなどをサポートしています。

主な特徴:

  • 統一API:一貫性のある一つのインターフェースを提供し、基盤となるモデル実装に依存しない。ユーザー特徴量はkey-value形式または構造化オブジェクトで、施策特徴量はkey-valueで受け取り、出力形式も明確に定義(単一スコアまたは施策ごとのスコアリスト)
  • 動的モデル管理:サーバー再起動不要でモデルの入れ替えが可能、継続的な実験や改善を促進
  • システムに組み込まれたモニタリング:すべてのモデルから排出される予測におけるレイテンシやエラー率を自動収集し、システムの信頼性を担保
  • 開発者向けツール:モデルを検証する機能や検証用の環境でも安全にテストできる APIを用意

推論最適化のための入力形式設計

TensorFlow Servingは、フラットな名前空間のテンソルを入力として要求します(テンソル名とデータをマッピングした辞書)。Python版TensorFlowが対応するような入れ子構造(辞書、RaggedTensorsなど)とは異なり、より厳密な制約があります。これにより、スケール時における構造化特徴量の表現が課題となります。

最適化までの試行錯誤:

  • 初期方式:特徴ごとに個別テンソルを作成し、特徴名を鍵にする。これは実装は簡単ですが、膨大なテンソル数のシリアライズ・名前解決のコストにより効率が悪い
  • tf.Example形式:TensorFlow標準のシリアル形式にエンコード する。こちらはProtoパースが重く、遅延が改善されなかった
  • 最終方式(最適化済):同じ特徴を1つの均一型のテンソルにまとめ、インデックスで識別 をする。この手法ではテンソル数を最小化しながらも、TensorFlowの内部にある特徴レゾリューションと同調

実装詳細

  • ユーザー特徴量:例えば [None, 4] 型の数値テンソルで表現、インデックスは特定の特徴に準ずる(signup age、LTVなど)
  • 施策特徴量: [None, None, N] 形式のテンソルでユーザーあたり複数の施策に対応し、treatment_countsテンソルでユーザーごとの区切りを示す
  • GPU最適化:TensorFlow Servingの自動バッチ機能を活用。treatment_countsテンソルでパディング除去や区切り再構築を処理
    メタデータ管理:トレーニングと推論時の整合性を保つため、テンソルindexと特徴名の対応をメタデータファイルで管理

この最適化された設計により、p99レイテンシを100ms未満に抑えながらリクエストごとに最大1,000施策をスコアリングを、6,000QPS で提供することができました。

サービングモデル検証フレームワーク

すべての学習済みモデルは、Prediction Service APIと互換性を持つ必要があります。そのため、次の3段階からなる包括的なローカルテストフレームワークを構築しました:

環境構築

  • Kotlin Prediction ServiceとTensorFlow Servingを含む完全な本番相当スタックをローカルに起動
  • モックではなく実際のバイナリで検証可能

テストオーケストレーション

  • pytestと補助クラスで管理
  • モデル配置や高レベルのクライアント操作を抽象化
  • テスト記述者はpandas DataFrameで操作し、裏側でテンソル変換、gRPCリクエスト、レスポンス解析が行われる

テスト実行

  • ファイルベースの検証エンドポイントでモデルと特徴ファイルを読み込み、スコアを出力ファイルに保存して整合性を検証
  • 運用環境配備前に、モデルが正常に読み込まれ推論可能かを確認

動的モデル読み込み

Auxiaの動的モデル読み込みシステムでは、クライアントからのリクエストごとにモデル名とダイジェスト(内容のハッシュ)を指定できます。それに応じて、対応するモデルを透過的に取得・検証・サービングするため、推論サーバの再起動は不要です。

モデル配布

モデルは、Google Cloud Artifact Registry に OCI イメージとして公開されます。各イメージには、以下のような内容が含まれます:

  • TensorFlow SavedModel(/data/tensorflow_serving_model/model)
  • 入出力形式を記述した metadata.json ファイル

これにより、機械学習エンジニアやデータサイエンティストが頻繁にモデルを更新し、latest や canary などのフローティングタグで本番環境に素早く反映できるようになります。

実行時アーキテクチャ

受信した gRPC Predict リクエストは、ModelRegistry を経由して適切な ModelLoader にルーティングされます。TensorFlowモデル用のコンテナに関しては、次のようなフローです:

  • DockerModelLoader:完全修飾画像名を解決し、live や canary タグを処理、イメージマニフェストを取得し、対象の Digest に基づいた軽量な spec を生成
  • TensorflowModelLoader:モデルをローカルに配置し、2つの状態マシンを協調して管理。Auxia側の内部状態とTensorFlow Serving側の構成が常に同期するよう調整

ステートマシン管理

ModelStateMachine 各モデルのライフサイクルを管理:

  • NEW → DOWNLOADED:ローカルにファイルをステージング
  • DOWNLOADED → LOADED:TensorFlow Servingに構成リロードを送信
  • LOADED → AVAILABLE:GetModelStatus APIでServingの準備完了を確認
  • 一定時間に使用されなかったモデルは自動的にアンロード&削除。時間は調整が可能
  • 一時的な障害処理のためのバックオフタイマー付き読み書きミューテックスガード

TFServingStateMachine 全モデルの統合状態を管理:

  • すべてのロード済みモデルを1つの ModelServerConfig に集約
  • ReloadConfigRequest API を通じて一括更新を行うことで、操作競合や TensorFlow Serving の既知バグ(unknown-status エラーなど)にも対応

両ステートマシンは、Kotlin のコルーチン上で専用ディスパッチャーを使って非同期に動作するため、サーバーの I/O スレッドをブロックすることはありません。

Auxiaでは、Canary デプロイを正式にサポートしています。機能はアーキテクチャに組み込んであり、_canary タグ付きモデルを検出すると、Docker loader が ModelCanaryConfig protobuf をイメージ ラベルから読み取り、トラフィックの振り分け比率やモニタリングパラメータを設定しています。

本システムは、リクエストの一部を新バージョンに確率的にルーティングしながら、ライブバージョンへのトラフィックを維持しています。カナリアモデルは事前にウォームアップされるため、レイテンシのスパイクの発生を最小化しています。レイテンシ、エラー率、出力分布のモニタリングにより、プロモーションまたはロールバックが自動的に判断されます。

この仕組みにより、ゼロダウンタイムでのモデルライフサイクル管理が可能になり、安全かつ迅速な実験と本番展開が実現します。

レイテンシとパフォーマンスの改善

  • Auxia の最適化により、推論パイプライン全体で大幅なレイテンシ改善を達成しました
  • 注:レイテンシのグラフは対数スケールで示されています。数値は高負荷状態下での負荷テスト結果に基づいており、本番環境ではさらに10倍速いこともあります。Python Pandas をベースとした旧システムでは 99 パーセンタイルのデータは存在しません。
  • 入力形式の最適化、効率的なバッチ処理、動的モデル管理の組み合わせにより、Auxiaは高い性能目標を満たしながらも、機械学習の迅速な実験と展開に必要な柔軟性を維持しています。

詳しくは、ぜひ Auxiaの公式サイトよりお問い合わせください。

PLATFORM

AuxiaのAnalyst Agent:AIの意思決定に「なぜ」を加える進化

by
Ravi Desu
July 9, 2025
5 分

本日、長い時間をかけて準備してきた大きなアップデートを皆さんにご紹介できることを、とても嬉しく思います。私たちの「Analyst Agent」(分析エージェント)が、ついに新しく生まれ変わりました。これにより、マーケティングチームが施策の効果を分析する方法が大きく変わります。

たとえば、「最も成果が出ている顧客層にはどんな特徴があるのか?」「特定の流入チャネルから来たユーザーに最も響いたメールのパターンはどれか?」といった問いへの回答を、データサイエンスチームに依頼し、何日も待った経験はないでしょうか?私たちはその課題を解決するためにAnalyst Agentを開発し、今回のアップデートでさらにスピーディーかつ賢く、そしてパワフルになりました。

質問すればすぐに「理由」がわかる

新しくなったAnalyst Agentでは、専門知識がなくても、施策の成果が出た「理由」がすぐに分かります。たとえば、こんなふうに自然な言葉で質問するだけです:

  • 「先週改善したオンボーディングメールに最も反応したのはどの層?」
  • 「アプリ内のアップセル施策は、高所得層に対して効果があった?」
  • 「成果が高かったクリエイティブにはどんな傾向がある?逆に悪かったのは?」

私たちのDecision Agent(意思決定エージェント)は毎日、何億回もの意思決定を行っています。最適なアクションやコンテンツ、インセンティブ、配信タイミングなどを選んでいるのです。そして今回、Analyst Agentによって「なぜその選択がうまくいったのか」まで明らかになります。

「ブラックボックス」からの脱却

AIは確かにルールベースの仕組みよりも高い成果を出すことができますが、背景にあるロジックが見えにくく、チームは結果を“勘”で解釈するしかない——これがいわゆる“ブラックボックス問題”です。今回のアップデートで、その壁を打ち破ります。

今回のアップデートで実現した3つの進化

1. アイデアのスピードで動ける
これまで数週間かかっていた分析作業が、チャットベースのインターフェースで即座に完了します。つまり、実験・学習・成果創出のスピードが格段にアップします。

2. 専門知識がなくても使える
マーケターの思考に沿って設計されているため、技術的なスキルは不要。顧客層、地域、コンテンツのバリエーションなど、知りたいことを自然に聞くだけで、重要な示唆が引き出されます。

3. エンタープライズレベルの安心感
既存のデータと安全に接続でき、プライバシー・パフォーマンス・コンプライアンスの基準もクリア。データの共有はされず、企業の知見は常に保護されます。

インサイトが積み重なり、企業の「知」になる

Analyst Agentは従来のBIツールとは違い、単なるデータの可視化ではなく、より深いキャンペーンレベルの示唆を引き出す設計になっています。

Auxia独自のトリートメントフレームワークと意思決定データと連携しているため、「誰に」「いつ」「どんな施策を行い」「どんな結果が出たか」をリアルタイムに把握できます。しかも、手動の設定は一切不要。自動で効果測定や比較分析を行い、即時に明確な示唆を提示します。

さらに使えば使うほど、社内に知見が蓄積されていきます。過去の質問、分析、結果が一元的に記録され、パターンを学習。やがては、まだ質問していないことまで先回りして提案してくれるようになります。

つまり、成長インテリジェンスは「蓄積しながら進化」するのです。

賢い意思決定のパートナーとして

Analyst Agentは、ただの質問ツールではありません。思考を共にする“パートナー”です。

  • 実行可能な分析を提案してくれる

  • 問いの意図を深掘りする追加質問をしてくれる

  • あなたの仮説や回答に応じてリアルタイムに対応を変える

キャンペーン戦略を検証したいときも、成果の急上昇に理由を見出したいときも、このエージェントが「本当の問い」を一緒に探し出してくれます。

今後の展開について

アップグレードされたAnalyst Agentは、現在一部の顧客に提供を開始しており、この夏の間に順次拡大していきます。すでにAI Decision Agentをご利用いただいている方には、きっとその連携の効果を実感していただけるはずです。まだAuxiaをお使いでない方も、今が最適なタイミングです。

デモをご希望の方は、こちらのフォームからぜひお申し込みください。

NEWS

Auxia、日本法人を設立

by
Sandeep Menon
July 4, 2025
2 分

Auxiaはこのたび、AI主導でカスタマージャーニーを自動最適化するプラットフォームを日本市場でも本格展開すべく、Auxia Japan株式会社を設立いたしました。私たちは、企業のマーケティングやプロダクト部門が抱える「パーソナライズはしたいが、時間も人手も足りない」という課題を、AIによって根本から解決します。今回の日本ローンチにより、私たちは世界でも屈指の洗練された市場である日本への本格展開を開始します。

なぜ日本なのか

日本は、世界でも特に品質・精度・顧客体験へのこだわりが強い市場です。私たちAuxiaは、そうした高い期待水準に応えるべく、AI主導でカスタマージャーニーを自動最適化するプラットフォームを日本に展開します。すでにパートナーシップを結び、日本でも導入してくださっている企業様もいらっしゃいます。

日本市場のための体制構築とリーダーシップ

日本での取り組みをリードする存在として、吉嗣浩隆(よしつぐ・ひろたか)がAuxia Japan株式会社 代表取締役に就任しました。吉嗣は、20年以上にわたりプラットフォームエコシステムの構築に従事してきた経験を有しています。NTTドコモで iモードのパートナーシップを担当後、AdMob東京オフィスの立ち上げに参画。Googleによる買収後は、米国本社にてGoogle Playの国際展開をゼロから構築し、その後は日本においてPlayパートナーシップ事業を統括しました。日本のテック業界と深く接続したこの経験こそ、Auxiaの日本展開を導く上で欠かせない人材だと私たちは確信しています。

次世代のカスタマージャーニー設計を、日本へ。

Auxiaはすでに、金融、メディア、通信など、さまざまな業界で活用されています。Auxiaの特徴は、単なる自動化にとどまりません。従来、数ヶ月かかっていたML基盤の構築やA/Bテストの設計・運用といった作業を、マルチモデル同時実験と自己最適化アルゴリズムにより一瞬で可能にします。

  • 数百の仮説を同時に検証
  • 手作業では難しいセグメント間の微細な違いもリアルタイムに把握
  • 顧客ごとに異なる最適解を導き出す

こうした体験を、マーケター自身が直接扱える点がAuxiaの最大の魅力です。

今後の展開

今後、日本にオフィスを設置し、さまざまな業界の皆様とパートナーシップを深めていきます。また、カスタマーサクセス、ソリューションエンジニア、リサーチなどの分野で日本国内の採用も積極的に進めています。日本のお客様の期待にきめ細かく応える体制を築いてまいります。


CEO・共同創業者 サンディープ メノン、CTO・共同創業者 ラヴィ デス、代表取締役社長 吉嗣 浩隆と日本支社創設メンバー

ともに、次の知性を。

日本でAI活用に挑戦する企業・組織の皆様、Auxiaとともに新しい知的インフラを築いていきませんか。私たちは、皆様と未来を創ることを心から楽しみにしています。

INSIGHTS

エージェンティック・ジャーニー・オーケストレーションの主なユースケース

by
Cole Stuart
June 3, 2025
2 分

Agentic Journey Orchestration(エージェンティック・ジャーニー・オーケストレーション)とAIによる意思決定の進化により、マーケティングやプロダクトチームの働き方が根本から変わりつつある。
従来の自動化を超えて、ユーザーの行動に即したリアルタイムの意思決定と、スケーラブルなパーソナライズ体験が可能となっている。

マーケティングでは、静的なファネルやルールベースのトリガーに頼らず、顧客の行動から継続的に学習する適応型エージェントを導入できるようになり、エンゲージメントやコンバージョンの最適化が可能となる。
プロダクトチームでは、リアルタイムで機能のテストと改善ができ、より迅速な反復と応答性の高い体験が実現している。

こうした仕組みは理論ではなく、実際にキャンペーン成果、顧客維持率、プロダクト利用率といった面で大きな成果を生んでいる。
先進企業は意思決定インテリジェンスとジャーニー設計を中核業務に組み込み、受け身の対応から文脈を理解した能動的なエンゲージメント戦略へと進化している。

以下では、業界別にAgentic Journeyが戦略的価値を提供している事例を紹介する。

小売業(Retail)

  • リアルタイムの購買行動に基づくパーソナライズド推薦により2回目の購入を促進
  • 利益率とコンバージョン率を最適化する動的なプロモーション戦略
  • オムニチャネルでの顧客体験とロイヤルティ強化のためのジャーニー設計

※顧客データ(購入履歴、閲覧行動、感情分析など)を活用して、従来の「Xを買った人はYも買った」型推薦を超えた、文脈に沿った提案が可能。

銀行・フィンテック(Banking and Fintech)

  • オンボーディング完了とアクティベーション率の向上
  • 人生のステージや目標に合わせたパーソナライズ金融商品の提案
  • 意図に基づいた顧客維持とアップセルのジャーニー設計

※顧客のプロファイルやタイミングに応じた、ローン・クレジットカード・投資商品の提案で収益性とシェア拡大。

コンシューマーSaaS(Consumer SaaS)

  • ユーザーの行動に基づく機能・ナッジ・オンボーディング経路の個別最適化
  • 機能採用と利用状況に基づくジャーニー設計
  • セッション中に発生する解約リスクへのリアルタイム対応と引き留め施策

※自然なアップグレード経路やタイムリーな機能アンロックにより、有料プラン転換やアカウント価値向上を実現。

B2B SaaS

  • チームの行動や設定進捗に応じて適応するオンボーディングフロー
  • 拡張の可能性に基づく「次善のアクション」提案
  • プロダクト内の各タッチポイントでアクティベーションと維持を促すジャーニー設計

※利用傾向や拡張の兆候を捉えて、適切なタイミングで新機能・座席数・モジュールのアップセルを実施。

eコマース(eCommerce)

  • コンテキスト情報に基づくパーソナライズされたホーム、検索、カート体験
  • 購入履歴や意図をもとにしたスマートバンドル・クロスセル戦略
  • 行動・チャネル情報を使ったカート放棄からのリカバリー施策

※チェックアウト時の動的な提案やバンドル設計で、単価やリピート率の向上が可能。

メディア・エンタメ(Media & Entertainment)

  • 視聴履歴や関心度に基づくコンテンツ推薦
  • サブスクリプションライフサイクル全体での維持・アップセル戦略
  • トレンドや高インパクトコンテンツを予測的に提示

※利用度や好みに基づき、上位プランや限定パッケージへの誘導を最適化。

ホスピタリティ・レジャー(Hospitality and Leisure)

  • 滞在履歴や好みに合わせたパーソナライズオファーとアップグレード
  • 滞在前・滞在中・滞在後にわたる体験設計で満足度とロイヤルティ向上
  • 解約兆候をとらえてリアルタイムで提案する引き留めオファー

※滞在全体を通じて高付加価値な体験や収益化ポイントを提案し、満足度と単価の両立を図る。

PLATFORM

エージェンティック・ジャーニー・オーケストレーションとは?

by
Cole Stuart
June 1, 2025
7 分

マーケティングの未来を切り拓く:エージェンティック・ジャーニー・オーケストレーション

マーケティングスタックにおける新たなレイヤーが、組織の業務運営および顧客との関係構築の在り方を大きく変革しつつあります。それが「エージェンティック・ジャーニー・オーケストレーション(Agentic Journey Orchestration)」です。これは「AIディシジョニング(AI Decisioning)」とも呼ばれ、本稿ではその概要を紹介し、このアプローチが従来の決定論的なカスタマージャーニー設計とどのように異なるかを明らかにするとともに、いくつかの代表的なユースケースにも触れます。

エージェンティック・ジャーニー・オーケストレーションとは何か?

エージェンティック・ジャーニー・オーケストレーションとは、マーケティングチームやプロダクトチームが、従来の機械学習手法(ML)および近年急速に発展した大規模言語モデル(LLM)を活用し、個々の顧客に対して高度にパーソナライズされたリアルタイムな対応を実現するための意思決定を行う仕組みです。

現在主流の多くのテクノロジーソリューションでは、チームがあらかじめ定義されたルールやセグメントに従って、手動でメッセージの配信スケジュールを作成し、複数チャネルにわたって配信する設計がなされています。それに対して、エージェンティック・ジャーニー・オーケストレーションは、リアルタイムデータ、行動シグナル、過去の履歴などを継続的に分析することにより、特定の顧客に対してその瞬間に最適なタッチポイントを導き出し、企業が目指すコンバージョンやリテンションなどの成果に直結する行動を促進します。

従来のソリューションが「次に取るべき最善のアクション(Next Best Action)」の実現を目指していたのに対し、AIベースのシステムでは「次に取るべき最善のアクション」に加え、「最適なコンテンツ」「提供すべきプロダクト」「タイミング」「頻度」「インセンティブ」など、複数の要素を組み合わせた最適解を予測し、実行することが可能です。

AI vs. 従来のルールベースアプローチ

それでは、マーケティングおよびプロダクトチームがこれまで製品体験やキャンペーンのオーケストレーションを行ってきた方法と、どのように異なるのでしょうか?

AI導入以前

従来のルールベースの意思決定は、あらかじめ定義されたルールや条件分岐ロジックに依存しており、多くの場合、人の手による調整が必要でした。たとえば、マーケティングチームがウェルカムメールキャンペーンを企画する際、このようなシステムではロジックの修正やパフォーマンス向上のために、手動での更新が求められます。その結果、急速に変化する環境への柔軟な対応が困難となっていました。

顧客ジャーニーを構築する企業が直面していた主な課題は以下のとおりです:

  • 活用されていないデータ: 顧客データの大半(68%以上)はパーソナライズに活用されておらず、その主な要因は、必要なデータサイエンスやエンジニアリングの専門リソースを確保できないことにあります。
  • 手作業で非効率なプロセス: 従来型のルールベースのジャーニー設計は、非常に手間がかかり、煩雑で時間を要するため、機動力や柔軟性が制限されます。
  • 人間の意思決定のスケーラビリティ: 企業規模が拡大するにつれて、人間の意思決定には限界が生じ、チーム間の連携や多様な仮説の検証を通じた本質的なパーソナライゼーションの実現が困難となります。

AI導入以後

エージェンティック・ジャーニー・オーケストレーションは、主にクラシカルな機械学習(ML)および大規模言語モデル(LLM)といった先進的な人工知能技術を活用し、企業の上位目標に沿った自律的または半自律的な意思決定を実現します。

その最終目標は、各顧客に対して1対1で高度にパーソナライズされた体験を提供することです。

仕組みの概要:

エージェンティック・システムは、企業が保有するファーストパーティデータを最大限に活用し、各顧客にとって最も効果的な判断を下します。これらのシステムは、製品やマーケティング体験においてMLモデルを本番環境で活用するために必要な複雑なデータ変換作業を自動化する堅牢なインフラを備えています。通常、このようなインフラの構築には、十分な体制を整えたデータサイエンスおよびエンジニアリングチームによって数ヶ月を要します。

チームは、目標、制約条件、および顧客との接点となるウェブやモバイル製品体験、あるいはメールやSMSなどのライフサイクルチャネルを定義するだけで済みます。AIベースのシステムの利点は、従来のA/Bテストでは4~5パターン程度しか用意できなかったコンテンツを、数百パターン生成してモデルに選ばせることが可能である点にあります。

AIは、各顧客に対して最適なタッチポイントとその順序を決定し、自動化された実験ループの中で常に体験を最適化していきます。膨大かつ多様なデータセットをリアルタイムで分析し、意思決定に反映させます。

AIによる最大の違いは、個々のデータと過去のインタラクションに基づいて体験を極限までカスタマイズできるだけでなく、そのプロセスが非常に動的かつ適応的である点です。AIは継続的に学習を行い、新たなデータやフィードバックをもとに戦略を改善し、顧客行動の変化に迅速に対応できるようになります。また、構造化されていない複雑なデータにも対応可能であり、従来のルールベースのシステムでは見逃されがちな傾向や行動を予測する能力に優れています。

将来の自動化意思決定は、従来のマーケティングおよびプロダクトチームが仮説、目標、制約、整合性、ガバナンスを担い、AIディシジョニングが動的な適応性、パーソナライゼーション、スケーラビリティを提供するという協調的なモデルへと移行していくと考えられます。

ユースケースの一例

AIディシジョニングとエージェンティック・ジャーニー・オーケストレーションの組み合わせは、さまざまな業界において定量的な成果をもたらしています:

  • リテール - 初回購入から2回目購入へ:購買履歴、閲覧行動、ユーザーの好みを分析し、商品カテゴリ、コンテンツ、表現形式をパーソナライズ。
  • コンシューマーSaaS - アクティベーションとリテンション向上:リテンションに因果的に寄与する機能の利用を促すナッジを提供。
  • Eコマース - リカバリーキャンペーン:過去の行動、好み、関心をもとに、最適なメッセージ、タイミング、チャネル、インセンティブをパーソナライズ。
  • フィンテック / 銀行 - アクティベーション、アップセル/クロスセル、紹介促進:ユーザーのオンボーディング完了を促進し、適切な商品と紹介インセンティブを提示。
  • ホスピタリティ - ロイヤルティおよびエンゲージメント:過去の予約履歴、嗜好、支出傾向に基づき、ロイヤルティ特典と体験を個別化。

CASE STUDIES

5000億ドル以上の資産を持つグローバル金融機関が、オンボーディング完了率を50%以上向上

by
The Auxia Team
April 1, 2025
2 分

お客様が抱えていた課題

Auxiaを利用してくださるパートナー企業様の事例を紹介いたします。5000億ドル以上の運用資産を持つグローバルな大手金融サービス企業様で、パーソナライズされたデジタル体験のニーズを課題として感じていらっしゃいました。同社は投資および教育プラットフォームを運営しており、「パーソナライゼーション」の強化取り組みを推進することにしました。

この投資プラットフォームは、消費者にとって投資をより身近なものにすることでした。一方で、毎日、安定した数のサイト訪問者がプラットフォームを利用しているにもかかわらず、ほとんどのユーザーがアカウントを作成せずに離脱してしまうという問題がありました。これは、金融機関が潜在的な顧客を理解し、幅広く商品のエコシステムを紹介する機会を制限していました。この問題に対処するため、同社はAuxiaと提携し、アカウント作成を促すための最適なタイミング、方法、価値提案、コンテンツの表示場所などを特定することにしました。

ソリューション

Auxiaは、同社と緊密に協力して、ユーザージャーニーにおいて新規アカウント登録を促進する可能性が最も高いパーソナライズされたインタラクションを特定しました。チームは、プラットフォーム内の3つの主要な要素を特定し、顧客ごとに変化するパーソナライズされた施策を展開することにしました。

Auxia の機械学習基盤を活用することで、流入元のソース、行動インサイト(過去5つの閲覧記事など)、人口統計データ(年齢層など)を含む動的なユーザーの特徴を利用して、各顧客に適切なコンテンツ、アクション、表示場所、タイミングを調整することができました。これにより、この投資商品は、ユーザーにサインアップの完了を促す関連性の高い要素を認識した体験をリアルタイムで提供することができました。

結果

同社とAuxiaとの連携は、目覚ましい改善をもたらしました。

  • サインアップ完了率が50%向上
  • 月間のグロース施策検証数が22倍に増加
  • 最も成果の高い施策のクリック率(CTR)が20倍に増加

この取り組みの追加の詳細:

  • 175以上のコンテンツバリエーションをテスト
  • 6週間以内で測定可能なポジティブな影響を確認
  • 数百万件の機械学習主導の意思決定を提供
  • 意思決定ごとの遅延は75ミリ秒未満で、シームレスなユーザーエクスペリエンスを実現
  • 継続的な最適化のため、毎月40以上の新しい施策を導入

拡大と今後の計画

これらの結果により、同社はAuxiaのプラットフォームの利用を当初の計画を超えて拡大しました。その後、プラットフォームはホームページ全体を再設計し、Auxiaの動的な最適化機能を活用することで、さらに大規模なパーソナライズを実現しています。